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【第8章】コラム:Googleのエンジニアとは

 Googleにはいくつかの部門に別れています。Google検索、Google Map、YouTubeなど様々なサービスを日々利用しているので、それらを開発するエンジニアが真っ先に思い浮かぶかもしれません。またGoogleの重要な収益である広告関連の部門もあります。そして私が所属していた法人向け部門というのもあります。皆さんが日頃利用しているGmailやGoogleドキュメントなどの無償サービスをSLAなどを付加して企業内でも利用できるGoogle Workspace(GWS)や自社システムを構築するためのインフラをクラウドで提供するGoogle Cloud Platform(GCP)などを取り扱っているのがこの法人向け部門です。以前はGoogleエンタープライズ、Google for Workなどと呼ばれていましたが現在ではGoogle Cloudと呼ばれる一つの部門となっています。

 今回取り上げているSREはこの中ではエンジニア部門に所属します。Googleのエンジニアの面接は非常に難しいと言われています。もちろん正解トップクラスのITカンパニーの開発部門ですので、全世界から優秀なエンジニアが集まっているのは事実です。何度かGoogle社内でエンジニアの人たちと関わることがありましたが、実際に彼ら、彼女らと話をすると非常に話しやすく、好感の持てる人が多いことに気が付きます。私もエンジニアの端くれではありますが、これまで私の周りにいた開発者(仲間)はどこか職人気質で一般的な会話が苦手な人が多く、接し方に苦労することもありました。

 ただ私の経験で言えばGoogle内のエンジニアに関しては非常に話しやすく、難しい技術に関しても常にわかりやすく説明しようとしてくれました。もちろん全員がそうだというわけではないと思いますが、多くの人が通常の会話もできる人たちでした。私をGoogleに誘ってくれた友人もGoogleのエンジニア職でしたが、彼も非常に深い技術スキルを持っているにも関わらず、多趣味で気さくに話せる人でした。これは私感も入るかもしれませんが、Googleにエンジニアとして採用される人は単に技術力だけがあればいいというわけではなく、その難しい技術を一般の人にもわかりやすく説明できる技能も持ち合わせた人が多い気がします。Googleではカルチャーを大切にしています。

 そしてそのためのコミュニケーション、コラボレーションを大切にしています。そのため社内には至るところにミニキッチンといわれるコーヒーや飲み物、スナックなどをフリーで提供する場所があり、そこで仕事の合間に会話をしやすい環境として提供されています。その他にも社内にはコミュニケーションを取りやすくするための場所やツールが多く存在しています。SREもコミュニケーションやカルチャーが重要な要素となっています。これはGoogleだけに限った話ではないともいますが、これからのエンジニアは個々の技術力はもちろん、チームとして動ける人が必要とされているのだと思います。

最後に

 SREは今後特にクラウドでの開発手法のひとつとして注目されてくると考えます。GoogleやAmazonが自社のクラウド環境をGCPやAWSにより一般の人にも開放し、社会全体のITシステムの仕組みをクラウドという集約型のインフラ環境にシフトさせようとしています。これまでのDevOpsの混沌とした関係を、綱引きの要領で信頼性、可用性を利用してまるでひとつの競技のように考えたSREという開発、運用、リリースのアプローチは新しいサービスを安心して利用できるようにしてくれるでしょう。一月に1時間でも計画停止をするシステムは次第になくなり、いつでも必要なときに利用可能なクラウドサービスは当たり前になってきます。

 それが「あたりまえ」になってきた時こそ、SREが浸透したクラウドサービスの世界なのかもしれません。もちろん、今後SREを超えるような仕組みが登場すればそれは我々利用者側にとっては歓迎すべきことです。自動化という流れは機械学習にも導入されてきており、日常生活における「トイル」も限りなくゼロになれば本当にやりたいことだけやっていればいい時代になるかもしれません。場所も時間も関係なく提供されるクラウドサービスを利用し、利用した分だけ料金を支払い目的を達成できる世界を実現するためには今の所SREは非常に有効な手段と言えるでしょう。


2011年 11月

筆者とエリック・シュミット

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